◆ QOLプロモーション演習T、U(高齢者支援グループ演習)
平成19年度第2回住まいのミュージアム・想い出サポーター養成講演会・研修会報告
- [日 時]
平成20年2月23日(土)13:30 〜 16:30 - [場 所]
大阪市立住まいのミュージアム・大阪くらしの今昔館・風呂屋の間 - [概 要]
大阪市立大学生活科学部QOLプロモーション演習T、II(高齢者支援グループ演習)では平成20年2月23日(土曜日)平成19年度第2回の想い出サポーター養成講演会・研修会を開催いたしました。今回は、大阪市の社会福祉協議会、地域ネットワーク委員会、地域包括支援センター、介護老人保健施設、などから約30名の参加がありました。GP受講生は高齢者支援グループの2名、他GP履修生1名「懐かしの間」の学生・院生スタッフ4名が参加しました。 - [プログラム]
13:30 開催にあたって(大阪市立大学・生活科学研究科 曽根良昭) 13:40−14:40 地域における回想法の取り組み・ボランティアと共に −ボランティアの参加という視点から−
宮古市・ボランティア 中屋惠久さん 藤田憲子さん14:40−15:40 大阪市立弘済院「懐かしの間」グループ回想法のこれまでと その成果 −回想法の実際とその効果検証−
岩手県立大学大学院社会福祉学研究科 工藤夕貴さん
大阪市立大学大学院生活科学研究科 原田智子さん15:40−16:30 意見交換 - [内容]
今回は地域における回想法の取り組みにはボランティアの方の“力”が重要と考え、岩手県宮古市でのボランティアによるグループ回想法の実践について“地域における回想法の取り組み・ボランティアと共に−ボランティアの参加という視点から”のお話を宮古市で回想法ボランティア活動をされている中屋惠久さん 藤田憲子さんにお願いしました。それに加え、大阪市立弘済院での「懐かしの間」グループ回想法のこれまでの成果とその実際を、このグループ回想法のリーダーを務めてこられた・務めておられる岩手県立大学大学院社会福祉学研究科 工藤夕貴さんと 大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程の原田智子さんにお話をしていただきました。以下、2名の受講生のレポートです。
グループ回想法の研修会に参加して(1)
今回の回想法の研修会では岩手県の宮古市でボランティアで回想法を行っている方の話を聞いた。この地域では元気な高齢者の方を対象に回想法を行っているが、単なる昔話ではなく、回想を行うことが重要だといっておられたのが印象的だった。また、回想法によって地域の高齢者の方との交流や、高齢者同士の交流を深め、より暮らしやすい環境を作る手助けにもなっているようだ。様々な地域で回想法が取り入れられ、地域の特性によって形態に違いはあるものの同じような取り組みが行われている。互いにどのようなことをして、どのような効果が得られたか、どのような問題が起こりうるかを知ることでさらに地域の活動につなげていくことができると感じた。
続いて、大阪市立弘済院での回想法についての話を伺った。こちらは宮古市での回想法とは異なり、専門の医師の方とも協力して経度の認知症の高齢者の方に対して回想法を行っている。回想法といっても様々に工夫を凝らして高齢者の方が活動自体を楽しんでいただけるように計画をしていた。回想法を行う前と行った後で認知記憶や行動を評価するHSD−RやMMSE、FABといったような方法では数値としてはほぼ変化がなく、はっきりとした効果は得られなかったが、心理的な側面をみるロールシャッハ法やバウムテストでは回想法の効果があったと考えられる結果が出ていた。もちろん、個人差も、回想法以外から受ける影響などもあるのだろうが、コンスタントに回想法を行うことで、認知症の症状になんらかの影響があたえられているようだ。回想法に参加したある高齢者の方の服装や人に対する接し方も目に見えて変わっていったという例を聞いて、より多くの方に回想法を体験してもらえる環境ができたらいいと感じた。
最後に、住まいのミュージアムを高齢者のかたに使っていただけるような利用方法についてのディスカッションが行われた。専門的な知識が必要なことやコンスタントな参加が要求されることから回想法を取り入れるのは難しいと思うが、再現されている町並みを利用して高齢者のかたと一緒に絵を書いたり、その絵を飾ったりできる企画があればいいのではないかと思った。学生が一緒になって企画していければいいと思う。
グループ回想法の研修会に参加して(2)
回想法に思うこと
演習には2度目の参加であり、また1度実際に回想法に参加していたので、ある程度の知識を持って今回の演習に参加できた。
今回の演習は、前半は回想法を地域の中で実践している方の話を映像と交えて伺った。お年寄りの方に昔のことを思い返してもらいやすいよう、懐かし弁当のようにお手玉を使っていた。お手玉が登場したとたん参加されていたお年寄りの方々の動きが変わり、誰もがすぐお手玉を手にとりクルクルと3つのお手玉を回し始めた。映像だったが、私は楽しそうな場の雰囲気を感じた。話し合いの中ではほとんどしゃべらなかった方が立ち上がり歌いながらお手玉をしたというお話を聞いて驚いた。小道具は昔を思い返してもらうきっかけだけでなく、場に参加するきっかけにもなるのだと感じ、有意義なものと感じた。実際、弘済院で懐かし弁当が出てきた時、緊張感が一切なくなり和やかになり、皆の意識が1つに集中したと感じた。だからリラックスして参加してもらい会話を楽しんでもらうのに小道具は回想法にかかせないのだろう。 後半のテーマは回想法による結果が報告された。数クール行われたデーターを集め、発言回数やロールシャッハ法の結果を開始前後で比べることで効果を検証していた。ペーパーテストによる認知度の数値は上がったり下がったりしており、明確な効果は見受けられなかった。しかし、紙に木の絵を書くテストがあったのだが、1クールはだいたい半年にも関わらず、私はお年寄りの書く木の絵が回想法前後で大きく異なっていると感じた。人の癖は大きく変わるものではなく、その上ペーパーテストから得られる数値は体調にも影響をうけるの、この木の絵の変化には驚き、そして回想法により何か変化があったのだと考えた。
回想法は新しい試みではあるが、長期の結果を検証することで明確な結果が得られるのではないかと今回の演習で感じた。

講演の様子1

講演の様子2