◆ 活動地域マップと連携グループ

1 住吉区の概要(大阪市住吉区ホームページなどより)

住吉区は大阪市の最南部に位置し、大和川をへだてて堺市と隣接している。区内には東から順に地下鉄御堂筋線・JR阪和線・南海高野線・上町線・阪堺線・南海本線と6本の鉄道が、また、あびこ筋とあべの筋(通称13号線)の2本の主要道路が、いずれも都心部と南北に結ばれており、交通の至便さと閑静な環境のため、区内全域が居住地域とそれに付随した商業地域となっている。現在も、都心への交通至便な住宅地として、公営住宅の高層化やマンション建設などにより都市整備が急速にすすめられている。

平成12年の国勢調査によれば、面積は9.34平方キロメートル、人口は男76,412人、女84,643人で世帯数は72,163世帯、1世帯あたり人員は2.23人、人口密度は1平方キロメートル当たり17,244人である。また、高齢者比率は17.7%であり、大阪市全体の17.1%とほぼ等しい値である。

昭和3年に全国で最初の市立商科大学として開学された大阪市立大学のキャンパスは、住吉区南部に広がっており、昭和47年から市民講座を毎年開講して、地域住民との積極的な交流を図っている。

2 「住吉区ネットワーク」の現状と生活科学部との関係

住吉区では、平成4年度より高齢者に対する「住吉区ネットワーク」の構築を開始し、現在では高齢者に限らず、子育てや障害者の地域支援を含めた、地域住民の地域生活支援にまで拡げられてきた。このネットワークには、行政の保健師、栄養士、ソーシャルワーカー、警察、地域の医師、施設や団体の職員、ケアマネジャー、福祉や住宅に関わる事業者といったフォーマルな専門職と、各小学校区に配置されているネットワーク委員、自治会役員、民生委員等のインフォーマルな地域住民を構成員として、いくつかの部会に分かれて日常的・定期的な活動をしている。高齢者部会を例に取ると、月に1回実務者の会議が開催され、地域生活が困難な高齢者について支援方法を検討している。さらに、3か月に1回代表者会議が開催されて、高齢者の地域生活のあり方について検討し、大阪市や住吉区に対する提案などを行っている。

生活科学部では、教員や大学院生が、「住吉区ネットワーク」が作られて以来、ネットワークでのスーパーバイザーとして活動してきた。同時に、本学部教員がネットワークのあり方について検討する委員会の中心的役割を担い、積極的に関与してきている。

3 「平成16年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム」申請以降、生活科学部が独自で新規に実施してきた実績

生活科学部は、平成16年度現代的教員ニーズ取組支援プログラムに申請(ヒアリング段階で不採択)し、その後も、1年間、独自で新規に以下の6つの事業を実施し、学生の現代的教育ニーズに応えるべく準備してきた。

(1)QOLプロモーション4科目の試行実施

今年度は「QOLプロモーション」の講義と演習を試行実施する。具体的な内容を以下のように定めた。

「QOLプロモーションI・II」および「同演習I・II」
科目名 「QOLプロモーションI・II」および「同演習I・II」
科目英文名 QOL Promotion I・II and Practice of QOL Promotion I・II
担当者 生活科学部全教員
科目内容 本講義および演習では、生活科学部を構成する3学科それぞれの専門的立場をもとに、全教員が共同して生活の質(Quality of Life; QOL)を多面的に分析し、問題の解決法を検討し、QOLプロモーションスキームを策定して実施する。このような授業を通じて、学生に生活科学の基盤を体得させ、俯瞰的視点を得させる。講義および演習での素材提供者として、住吉区から専門職団体の専門職、地域の地縁団体・NPO・ボランティア団体の代表者を募る。
授業内容 「QOLプロモーションI・II」では、3分野の教員および専門職の合同指導により、テーマを俯瞰的な視点で検討し合い、QOLについての理解を深める教育をする。

「QOLプロモーションI」の内容

  1. QOL概念について
  2. QOLと生活支援での俯瞰的アプローチ
  3. 栄養と食生活におけるチームアプローチ
  4. 居住環境改修や福祉機器活用等でのチームアプローチ
  5. QOLプロモーションと地域福祉

「QOLプロモーションII」の内容

  1. スペシャリストの課題
  2. 生活ニーズアセスメント方法
  3. コーディネーション方法
  4. チームアプローチ方法
  5. ケースマネージメント論

「QOLプロモーション演習I・II」

地域でのワークショップを実施することを重視する。実習では、地域の高齢者や児童施設、保健所等の行政機関を核にし、ライフサイクルで生じている生活課題を抽出し、QOLプロモーションのプロセスを試行的に体験する。このような実習を通じて、QOLに関わる問題がいかに多面的な解決を必要とするかを実感させ、専門教育や研究を遂行するための原体験とする。「同演習I」では自宅に居住する生活者、「同演習II」では施設等での生活者に分けて実施する。その際には、以下の手順に従って、常に3学科の教員が合同で授業内容を計画し、実施する。

  1. 生活者のQOLに関する実態把握
  2. 問題点の分析、把握
  3. 現場の専門職とともにQOLプロモーションスキームの策定
  4. 試行的に実施
  5. 評価とフィードバック

(2)生活科学部内に「地域交流推進室」の設置

生活科学部の地域連携を推進する「地域交流推進室」を平成16年度に学部内に設置し、推進室長をもとに「地域貢献委員会」を組織している。ここでは、教員の個々の地域連携を集約するだけでなく、全教員・全学生を参画させての「QOLプロモーション教育プログラム」を推進していくことを目的にしている。

(3)学生と地域との共同による、住吉区での「地域ネットワーク」構築に向けての実践研究の開始

大阪市立大学長裁量経費により採択された「都市問題研究」および大阪市の補助金により、3年間の研究を昨年度開始し、住吉区における「地域ネットワーク」再構築のために、以下の研究を授業と関連させて実施してきた。

  1. 住吉区内の既存の地縁組織とボランティア・NPOの活動状況とそれらの連携状況について、授業の一環として、教員・学生・地域が一体となり実態調査を実施した。
  2. 住吉区の諸団体からの協力を得て、障害者のライフストーリーについて聴き取り調査を行い、障害者の地域(公的サービス、既存地縁組織、ボランティアやNPO)からの支援受理状況を学習した。
  3. 以上の結果をもとに、平成17年8月に住吉区社会福祉協議会との共催で、「地縁組織とボランティア・NPOによる共生と協働による町づくりシンポジウム」の開催を予定している。

(4)住吉区の虚弱高齢者を対象とした生活問題研究の実施

生活科学研究科長寿社会総合科学講座所属の教員が核となり、大阪市立大学特別研究として補助金を得る「都市問題研究」として、都市に居住する高齢者の生活問題を複眼的に検討し、QOL向上に向けて指針を提示する3年間の研究を終了した。具体的には、虚弱高齢者に対する健康教育政策と生活支援のあり方に関する総合的研究を「住吉区民」を対象にして調査を実施してきた。この結果は、成果報告書『虚弱高齢者に対する健康教育政策と生活支援のあり方に関する総合的研究-大阪市を中心として-』にまとめられ、本研究の柱をなす以下の7つのサブテーマについて提言をまとめることができた。

  1. 虚弱高齢者の食生活・消化吸収機能の現状把握とそれらの改善に関する研究
  2. 虚弱高齢者の住居内の温熱・光環境実態と生活満足度に関する研究
  3. 閉じこもり高齢者に外出行動を促すための環境支援の提案
  4. 虚弱高齢者の身体機能と自立活動向上のための運動処方作成に関する研究
  5. 大阪市内居住高齢者の日常生活事故実態に基づく潜在的支援ニーズの把握
  6. 虚弱高齢者の介護サービス利用満足度および生活満足度に関する研究
  7. 虚弱高齢者の生活に対する地域支援システムのあり方に関する研究

(5)住吉区の地域づくりのための「アクションプラン」への参画

住吉区が行政・地域住民が一体となり作成する「アクションプラン」に多くの教員が参画し、現在作成過程にある。これは今年度末に作成されるが、毎年見直されることになり、今後は教員だけでなく、大学院学生を始め学生も参加協力することを企画している。ここでは、地域住民のQOL向上に向けての具体的な計画が作成されている。

(6)「栄養・食事相談室」の新設

生活科学部内に「栄養・食事相談室」を新設した。現在は、学生および教職員とその家族を対象に、栄養指導など対応しているが、近々住吉区内の地域住民まで対象範囲を拡充できるよう、人員設備などの整備を検討している。本相談室の目的は、身体・心理・社会面から食事に関する相談を介して、相談者のQOLを高めることにある。

4 QOLプロモーションに関連する生活科学部と「住吉区」との日常での関わり

  1. 本学所在地である住吉区については、既に区長からも積極的に協力が得られるとの確約を得ている。同時に、今までの実績で、地域の自治会等の役員との関係も良好であり、地域との関係においては、機運が熟している状況にある。
  2. 住吉区内小学校区での「子育て」グループの開発・育成を教員が支援し、ほぼ全小学校下でそうしたグループ活動が展開できている。
  3. 多くの学生がボランティアとして、住吉区内の児童、障害者、高齢者の諸施設で活動している。
  4. 「住吉区ネットワーク」に教員や大学院学生がスーパーバイザーとして参加している。

特に、生活科学部と隣接する住吉区社会福祉協議会、老人ホーム「アップリケア」、知的障害者通所授産施設「はあとらんど浅香」とのネットワークが既に組まれており、以下の連携がなされている。

  1. 学生の見学や職員のゲストスピーカーについては慣例化しており、3法人との連携の基盤を確立している。
  2. 当該地区の事例検討会に教員や大学院学生がスーパーバイザーとして定例的に参加している。
  3. 区社会福祉協議会を中心とした地域福祉計画の作成に対して、教員と大学院学生が参加し、住民とのワークショップのもとで、計画作成の中心的役割を果たしてきた。

5 住吉区を基盤とした生活科学部の活動実績

(1)『地域福祉実態調査報告書』地域福祉(住吉区北西部)実態調査実行委員会、平成13年3月

生活科学研究科の教員・大学院生が参画し、地域福祉(住吉区北西部)実態調査実行委員会が平成13年3月に報告書をまとめた。本調査は住吉区北西部を対象地域として、アンケートや聞き取りにより地域福祉に関する実態調査を行い、地域住民のワークショップを行い、今後の地域住民のQOL向上のためのネットワークづくりの方向性を明らかにした。

(2)『市民公開シンポジウム「高齢者が主体的に生きる社会を求めて」』平成16年1月24日、住吉区民ホール

生活科学研究科長寿社会総合科学講座所属の教員が核となり、都市に居住する高齢者の生活問題を複眼的に検討しようとする3年間の研究である。具体的には、虚弱高齢者に対する健康教育政策と生活支援のあり方に関する総合的研究を「住吉区民」を対象にして調査を実施してきた。研究成果は虚弱高齢者の健康維持、地域生活における支援のあり方、住宅改善を含む居住環境改善へと役立てられ、地域へ還元される。3年間の研究期間の中間時点で住吉区民を対象とした公開シンポジウムを実施した。

(3)「2001年度 児童・家族相談所活動報告」『児童・家族相談所紀要』第20号、69−70頁、平成15年3月

児童・家族相談所は大阪市立大学生活科学部内に設置され、全てのライフサイクルの人々を対象に、来所者に対して幅広い相談活動を行なっている。最近5年間の活動件数は、1998年50件、1999年34件、2000年117件、2001年160件、2002年103件である。2000年度からは大阪市健康福祉局への派遣相談活動も始めている。児童・家族相談所では年1回、上記のような相談活動報告と教員・院生の論文を掲載した『児童・家族相談所紀要』を発行し、広く専門職に配布している。

(4)『大阪市立大学社会福祉ゼミナール「自立生活支援」を考える報告書』大阪市立大学大学院生活科学研究科、平成16年3月

大阪市立大学大学院生活科学研究科が主催し、大阪市社会福祉研修・情報センターの共催で行なわれたゼミナールの報告書である。ゼミナールの趣旨は、施設や地域で生活支援をしている専門職が出会う様々な問題への対処の方法を講義と事例研究から学ぼうとするものであり、理論や実践を介して、利用者の「自立生活」について学習し合うものである。平成15年8月から12月にかけて8回にわたって行なわれた。

(5)『住宅改造無料相談所』大阪市立大学大学院生活科学研究科上田研究室、平成14年4月

生活科学研究科長寿社会総合科学講座居住福祉工学分野の上田研究室で実施している地域貢献のひとつ。伝統的な農村型住宅や都市の町屋は貴重な地域の文化的財産である反面、それらの伝統的住宅が様々な生活上の障害を生じさせている。特に高齢者や障害者にとっては不自由となる部分が多く、住宅内事故の一因にもなっている。そこで、この相談所では研究室スタッフが地域の人々の相談にアドバイスを行っている。

(6)『特別養護老人ホーム新生苑環境改善計画』大阪市立大学大学院生活科学研究科森研究室、平成15年10月

長寿社会総合科学講座居住福祉工学分野の森研究室のスタッフが取り組んでいる高齢者の居住環境改善のための実践資料である。高齢者の日常生活行動の観察、介護者へのヒヤリング、施設環境点検などを詳細に診断し、それを基に残存能力を生かした自立できるバリアフリー環境、プライバシーに配慮した個室整備、多様な行動が生まれる場所づくり、プライベートからパブリックへの段階的区分、歴史・文化への配慮などきめ細やかに対処する方法を実践的に進めている。